竜とそばかすの姫

ryu-to-sobakasu-no-hime.jp

以下ネタバレ有り。

細田守監督のサマーウォーズVR表現が好みだったので観に行った。

 

VRのデザインと空間の広さ・綺麗さは求めていたものがそのまま出てきたようなものだった。大衆のアバター(As)が主人公に群がってくるシーンはサマーウォーズの終盤のアカウントが乗っ取られるシーンに近い。シロナガスクジラにスピーカーが取り付けられているのが仮想空間ならではという感じでよい。
サマーウォーズより現実の時代が進んでいるせいか、あまりエラーが出ている描写が無かったのは少し残念?アンベイルの所でさえも想定されている動作のような描かれ方だった気がする。
歌っているときにBellの周りに文字(歌詞?)が出る表現だったり、ある種典型的な仮想世界がとても好きなのでその辺りは満足度が高かった。 ただ綺麗な空間(最初のクジラがいるところなど)だけでなく、抽象度高めの空間(竜が従えていたAIが導く空間など)も好みだった。あとシンプルにBellの衣装はばんばん変わってどれも綺麗だった。(いくら課金したのだろう)

 

動画サイトで配信している人が大勢いたり、生放送に直接繋げたりするのは最近のSNSを踏襲してる感じがあってどっぷり漬かってる身としては親近感。ただこの先の時代でどこまで残るのかは…?20年後とかに再度観たいかもしれない。(今日もフリートが消えたばかりである) InstagramFacebook傘下なのでそう簡単には消えないと思うけれど。

 

友人に誘われて始めたサービス上で、その友人のプロデュースもありつつ盛大にバズったうえでそのまま居座るくらいに歌が上手いという展開だったが、これはマジでそう。そうなってもおかしくなさそうと思うくらいには実際に歌が上手かったと思う。この歌に関しては劇場で聴いた方が良いと思う。特に終盤のアンベイル後の歌唱。
ただ現実的な話としては世界中で使われているサービスで日本人の歌が世界を巻き込むくらいバズるのかみたいなところはある。同時翻訳がサービスの裏で走っているだろうし問題ない?もしくは歌もそうだけど作曲の方向で心惹かれる人が多かったのかもしれない。アレンジしてくれた人が沢山いたという言及があったし。

 

Bellが出てきたときの批評コメントは絶妙に実在しそうでこういうことを匿名なのをいいことに言うやついるよな~って感じだった。この辺りはサマーウォーズからの時代の変化だろうか。あちらにはネガティブなインターネットの描写の記憶があまりない。(忘れているだけかもしれない) この記事(https://toyokeizai.net/articles/-/441282)では"ネットを肯定的に描き続けている"とあるけど、"否定はしていない"くらいの印象だった。
ジャスティスと呼ばれているグループが昨今のTwitterで見られる正義マンとめっちゃ被ってこれがインターネットだよな!!!となっていた。
生産性が皆無なのは理解しつつもTwitterで燃えてるツイートのリプ欄を覗いている人間としては、敵と決まった対象への投石と正義の下での断罪の描写(映画での竜への徹底的な迫害)は本当にネットをよく見ているという感想。私がリプ欄覗くのも無駄ではなかった(?)。 よく思い返すと陰謀論辺りもあってフルコースだったのでやっぱりネットを肯定的に描いているは嘘では???

 

課金砲(アンベイルするやつ)を出したときにスポンサーが後ろに一斉に表示されるシーンは好き。ただスポンサーが付いているとはいえ一般ユーザーがなんでアンベイルできるシステムを持っているのかは結局解決してない。スポンサーが開発→自警団として活動させる→スポンサーも印象アップの流れ?サービス管理者的にはまとめてBAN対象じゃない?正規の手段に則ってないアンベイル、法律に引っ掛かりそうな案件。

 

友人のヒロがいいキャラしてた。デスクトップPCを運びがち。毒舌というか言葉遣いが悪いくらいだけどすずというか登場人物の殆どと対称的だったのでよき。根が前向きで明るい人が多かったので一人いると際立つ。YOASOBIのボーカルの方だと終わった後に知ってマジ?となった。

 

物語としてはどうなんだろう?アンベイル砲の根拠が最後まで引っ掛かっていたので、それを軸というか縛りとして回っていた気がするのは…?竜も竜でネットの民曰く"執拗な攻撃"になっていたのかという理由は明言されてない。こちらはシンプルに憂さ晴らしとして補完したけど。 後半の一人で東京行くあたりはかなり無謀では?せめて誰かもう一人くらい連れて行こう?(特に大人)と思いながら観ていた。あと行ってどうするのか?とも。
改めてこうやって振り返ると画面と歌の強さにごまかされている感がある。前述のとおりアンベイル後の歌唱とその時の絵が非常に良いのでその後がやはり…。仮想世界と比べると当然現実の方が絵としては地味なので個人的には歌唱後から失速した印象がある。

 

全体としては歌と画面がよかったので劇場で公開中に観れたのはよかったが、という感じ。